(1)学術シンポ:「本州中央部における第四紀隆起運動」

2019 年の東京総会学術シンポジウムとして、「本州中央部における第四紀隆起運動」をとりあげます。
今日みられる島弧—海溝系の地形は、過去から現在まで基本的に変わることなく存在する準定常的存在であると考えがちですが、新生代末期の大規模隆起によって段階的に形成されてきた歴史的存在であることが明らかになってきました。
その背景には、①年代測定・広域テフラによる年代決定精度の向上②地形 – 地質調査の進展③測地データの解析など、詳細な研究の蓄積があります。このような研究は、多くの研究分野において詳細なデータが集積された日本だからこそ世界にさきがけてとりくむことができるテーマであり、新たな地球観を拓くいとぐちになるものと思われます。また、現在の日本列島のはげしい地殻変動の実態に即して、日本の国土や災害についての基本的な知識・認識をひろく普及するための基礎データになることが期待されます。

本シンポジウムを通して、これまで各地で進められてきた研究成果をもちより、本州中央部における広域的編年と運動像の解明を進めることができれば、日本の地質学における 1 つの大きな前進になると思われます。私たちは、各々の地域の詳細な地質調査にもとづいて地殻運動を復元してきましたが全体として、どのような広域的運動を行なっているのかを総合的に明らかにしたいと思います。

そこで今回の総会シンポジウムでは、とくに更新世以降の大規模隆起と地形形成の実態に迫るべく、①第四紀の広域的対比・編年表を作成し、②主に本州中央部各地の研究成果を共有し、③更新世以降の隆起運動の基本骨格を解明したいと考えています。 (シンポジウム世話人会)

日時 8月24日(土)午前9時〜12時
会場 芝学園講堂

プログラム

Part1
  • 9:00〜9:10 趣旨説明……世話人会
  • 9:10〜9:35 本州中央部の第四紀層序対比からみえる島弧の隆起運動の特徴……柴正博(静岡・東京支部)
  • 9:35〜9:50 第四紀更新世の花粉生層序の到達点と課題—中部日本を中心に……楡井尊(埼玉支部)・本郷美紗緒(長野支部)
  • 9:50〜10:05 関東平野中央部地下600mの層序と260万年前以降の構造運動……納谷友規(産総研)

Part 2
  • 10:05〜10:30 本州中央山塊の地形—地質構造と形成プロセス……矢野孝雄(松本支部)
  • 10:30〜10:45 南アルプくスと房総半島の隆起……斉藤尚人(千葉支部)
  • 10:45〜11:00 越後平野周辺における後期更新世の加速・前進する鉛直隆起運動と地形更新作用……久保田喜裕(新潟支部)
  • 11:00〜11:15 測地データからみた日本列島中央部の変動……小林和宏(長野支部)・飯川健勝(新潟支部)
  • 11:15〜11:30 本州中央部の火山—深成作用高温帯地域にみられる隆起地形と地震活動特性……足立久男(東京支部)・小林和宏(長野支部)
  • 11:30~12:00 総合討論

【シンポジウム世話人会】

柴正博(代表,静岡・東京支部))・足立久男(東京支部)・小林和宏(長野支部)・ 小林雅弘(神奈川支部)・久保田喜裕(新潟支部)・宮城晴耕(東京支部)・小川政之(千葉支部)・斉藤尚人(千葉支部)・竹下欣宏(長野支部)・鵜浦武久(東京支部)・矢野孝雄(松本支部)