……ほぼ半世紀におよぶ火山岩類の野外観察で,火山岩類の産状から成因を推定するある程度の知見を得ることができたと自負している.しかし,改めて文章にしてみると,これまでの経験から判断できることは少なく,自然は思っていたより複雑で,自然現象を十分に理解するにはまだ道半ばであり,ほんの入り口が少し分かりかけたに過ぎないことを思い知らされた.
<中略>
本書は火山岩類を1.溶岩・岩脈2.火砕岩にわけ,露頭観察と産状から成因について何をどう判断し解釈するかを記述したものである.上述のように自然界は奥が深く,露頭を前にした時,目の前の地質現象を自分なりにどう解釈したらよいかが分からず,50歳台になってからやっと露頭が少し分かるようになった.その経験から,教科書に書かれている地質現象が露頭ではどう見えるかを中心に置いたつもりである.解釈や記述の間違い,判断ミスなどがあるとすれば私の学習不足からくるものであり,平にご容赦願いたい.
これから地質学を学ぼうとする若い人たちが露頭を前にして,自分の持っている知識から何を観察し,観察したことから成因についてどう考えたらよいかを判断する一助になればと願っている.なお,この本は教科書というより露頭観察の手引書として扱っていただければ幸いである.使用した写真のほとんどは私が撮りためたものであり,他から借用したものは出典を記した.
(本書の「序文」より)
【もくじ】
- 1. 溶岩と岩脈
- 1.1 溶岩
- 1)節理 2)ランプ構造 3)流動角礫岩 4)溶岩ローブ 5)溶岩コイル 6)チュムラス 7)陸上の縄状溶岩 8)水中の縄状溶岩 9)溶岩表面の植物痕 10)重複ピロー: 筒状ピロー,入れ子状ピロー,底の破れたピロー 11)多重殻ピロー 12)S-タイプ,P-タイプのパホイホイ溶岩 13)パイプ気孔 14)縞状ピローと気孔 15)溶岩ドームと柱状節理 16)流紋岩ドーム中のローブ状岩体 17)ハイアロクラスタイト 18)火砕成溶岩
- 1.2 岩脈とペペライト
- 1)水中溶岩の給源岩脈:マシブ状給源岩脈,岩枝状給源岩脈,砕屑岩状給源岩脈 2)ペペライト
- 2. 火砕岩類
- 2.1 噴火の3つのタイプと火砕岩
- 1)マグマ噴火:噴火のメカニズム,マグマ噴火による砕屑物,軽石 2)マグマ水蒸気噴火:噴火のメカニズム,マグマ水蒸気噴火による砕屑物,爆発角礫岩,ベースサージ堆積物,テフラジェット堆積物(?) 3)水蒸気噴火:噴火のメカニズム,水蒸気噴火による砕屑物
- 2.2 降下火砕堆積物
- 2.3 火砕流堆積物
- 2.4 グランドサージと灰雲サージ
- 2.5 溶結凝灰岩とアグルチネート
- 1)溶結凝灰岩の溶結強度とフィアメの形状 2)アグルチネート
- 2.6 エピクラスティック火砕堆積物
- コラム1:塊状溶岩・ブロック溶岩・マシブ溶岩
- コラム2:軽石とスコリア
- コラム3:火砕流の冷却速度
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