(3)記念講演会「チバニアンと地質学」

19日(日)13:00~15:00 大ホール

講師:岡田 誠氏(茨城大学教授・チバニアン申請チーム代表)

講演題目:「チバニアンと地質学」

講演の概要:

第四紀更新世中期(77万~12.6万年前)がチバニアン(千葉の時代)と命名され、ちばの名前が地球の歴史になる可能性が高まってきています。

45.6億年の地球の歴史には115の地質時代区分が提唱されており、それぞれの地質時代の下限(はじまり)は、その境界が最もよく観察できる露頭を国際標準模式層断面とポイント(GSSP:Global boundary Stratotype Section and Point)と定めることで規定されています。現在まで68箇所のGSSPが決まっていますが、多くは欧州にあり、日本には1箇所もありません。

GSSPとして承認されるためには、①海成層であり多くの種類の微化石を含むこと。②複数の層位学的手法で対比が出来ること。③地質時代境界にまたがって連続的に堆積した地層であること。④物理的、法的、政治的な観点からアクセスが容易であり、露頭の保存が保障されていること。などの条件を満たすことが要求されます。

またGSSP承認のために、以下の4つの委員会・作業部会での決定が必要です。①国際地質科学連合(IUGS)執行委員会、②国際層序委員会(ICS)、③第四紀層序小委員会(SQS)、④下部-中部更新統境界(L-M境界)作業部会(WG)。今回はイタリアの2セクションと千葉セクション(市原市田淵)が候補地となり、2017年6月7日にWGに申請書を提出し、同年11月にSQSへ答申される候補地として千葉セクションが選出されました。

作業部会での審査では、千葉セクションの古地磁気シグナルおよび海洋微化石の産出の双方が良好であり、これまで酸素同位体カーブ・古地磁気極性・火山灰の放射年代が得られており、海洋微化石や花粉化石の群集組成復元が進んでいること等が評価されました。

下部-中部更新統境界(L-M境界)は気候変動パターンの変化があることから提唱されました。しかしその変化は漸移的で明瞭な境界は見られないことから、最後の地磁気逆転である松山-ブルン境界(M-B境界)を境界の目安に用いることが決められています。実際のL-M境界のGSSPは、このM-B境界と位置関係が明確な、露頭の上ではっきりわかる地層境界を用います。千葉セクションの場合は、白尾(びゃくび)火山灰層(古期御嶽火山起源)がGSSPとしてゴールデンスパイクを打つ地層になります。この白尾火山灰層は、露頭上で明確に確認できる地層であり、M-B境界が直上に記録されているからです。

 

チバニアン露頭

「チバニアン」露頭